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メディア掲載

徳島新聞 健康相談室
「片側顔面けいれん」掲載記事紹介

2006年7月20日 更新

Q.まぶたや頬が引きつる

60歳の女性です。 10年ぐらい前から、人と会話をしたり細かい用事をして緊張したりすると、右目のまぶたや頬にけいれんが起きます。 数軒の眼科で検査もしましたが、睡眠不足や過労が原因という程度で、特に治療はしていません。 目薬とビタミンB12を処方されましたが、その後も症状に変わりはありません。 先日、右の奥歯を治療するために大きく口を開けていると、右のまぶたから頬、口にかけてが引きつってけいれんが起きました。 治療が終わると次第に落ち着きました。以前、眼科へ通院していたとき「A型ボツリヌス毒素療法」の説明をしてもらったのですが、少し不安です。

A.ボツリヌス毒素で対症療法
回答 藤田眼科 下江千恵美

疲労や睡眠不足などで、まぶたが一時的にピクピクけいれんすることを経験した方は多いと思います。 大抵は、十分な睡眠をとり、目を休ませることで改善するのですが、質問者の場合は、けいれんがまぶただけでなく、同じ側の頬や口元に起こるということですので、 単に疲れということではなく「片側顔面けいれん」が起こっていると考えられます。

片側顔面けいれんは、中高年の女性に発祥することが多い疾患です。症状は、自分の意思と関係なく、片方の目の周りに軽いけいれんが出るようになり、次第に同じ側の額、頬、口、あごへ広がっていきます。 けいれんの程度が強くなると、顔半分が引きつり、ゆがんだような感じになります。 人と話をするときなど、緊張したときに出やすく、また、質問者のように口を大きく開けるなど顔の筋肉を大きく使うと、誘発されることもあります。 他人が思う以上に本人にとっては不快なものであり、けいれんが長く続くと、片方の目をあけにくくなるため、読書や仕事に支障が出ることもあります。

原因は、顔の筋肉を動かす顔面神経に障害が起きるためで、多くは、すぐそばを通る血管が神経を圧迫することによって起こります。 また非常にまれですが、動脈瘤や脳腫瘍が原因のこともありますので、治療前には眼科、脳神経外科などを受診し、必要であれば磁気共鳴画像装置(MRI)などで検査しておくことが良いと思います。

片側顔面けいれんの治療には、主に次の3つが挙げられます。■症状が軽い場合=抗けいれん剤や精神安定剤の内服で様子をみることがあるが、実際はあまり効果的ではない ■症状が重い場合=手術によって血管の神経への圧迫を取り除く神経血管減圧術がおこなわれる。根治的な治療で症状の改善率80%と有効な手術だが、術後の後遺症として 聴力低下が起こる可能性がある■手術を受けることがためらわれる場合=一時的に症状をとめる対症療法として、ボツリヌス毒素療法がある。

ボツリヌス毒素療法は、日本では2000年に、片側顔面けいれんに対して認可され、近年おこなわれるようになってきた治療法です。ボツリヌス菌は食中毒の原因として知られていますが、この菌が生産する A型ボツリヌス毒素を低濃度に薄め、けいれんしている場所の皮下に少量注射することで、筋肉を弛緩させ、症状を抑えることができます。 治療効果は3〜6ヶ月程度続きますが、その後、効果は弱まってくるため、再度注射が必要となります。

副作用としては、効きすぎた場合に、まぶたが閉じにくくなったり、物が二重に見えることがあります。しかし、これらは一時的なもので、数週間で元に戻ります。使用する毒素はごく少量で、作用範囲は注射した所から数センチですので、 全身的な副作用が現れることはほとんどありません。ただし、回数を重ねていくと効きにくくなる例があるといわれています。

患者さんの中には、長年けいれんに悩まされながらも、高齢で手術をあきらめていた方がたくさんいます。ボツリヌス毒素療法で不快感もなくなり、表情も穏やかになります。 生活に支障をきたすような症状がある場合は、主治医と十分に話し合った上で治療を受け、より快適な生活を過ごしてもらいたいと思います。

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